朝紀革命として書いた長編小説をこのサイトで再構築して記載してます。是非とも最後まで読んで頂けると幸いです!
ブラックバード-「飛べない鳥の旅路」より- 最終章
明日はいよいよ東京ドーム公演だ。
午前2時。
暗い部屋で僕は夢を見ていた。
幼い僕の右手には母の手が握られている。
左手に今も何処にいるのか分からない父の手。
近くの公園に行く途中の、とても穏やかな小春日和の思い出。
今も母の最...
ブラックバード-「飛べない鳥の旅路」より- 12章
気が付くと自宅の玄関に立っていた。
一体、どうやって帰宅したのだろうか。
全く覚えていない。
それ位の動揺が今の僕の全身を震わせ、意識は既に宇宙の彼方まで吹っ飛ばされていた。
ダメだ。冷静になんてなれない…
千恵子は何処だ?
急...
ブラックバード-「飛べない鳥の旅路」より- 11章
梅雨明けが発表された7月中旬のこと。
新しいアルバムのタイトルが『飛べない鳥の旅路』に決まった。
この前のカウンセリング時に脳裏を横切った瞬間から、この単語が脳の片隅にこびり付いて離れなかった。
半ば諦めるように決めたタイトルだが...
ブラックバード-「飛べない鳥の旅路」より- 10章
もう岡山に用事など無い。
それなのに僕は目的もなく旭川の土手沿いを彷徨うように歩いていた。
まるで、フランス革命から命辛々逃れた革命家のような心境で彷徨っていた。
すると、遠くの方に岡山市民会館が見えてきた。
ブラックバードが全国ツ...
ブラックバード-「飛べない鳥の旅路」より- 9章
実家の位置を間違えたのか?
自分の記憶を疑いながら、周囲の景色と道路などの位置関係をもう一度確認するが間違いないはずだ。
いや、幾ら考えても埒が明かない。
実家に電話を掛ければ全て解るだろう……
そんな簡単な解決方法を見失うほどに動...
ブラックバード-「飛べない鳥の旅路」より- 8章
5月16日
退院して2カ月以上が経つというのに、怠惰と臆病に満ちた僕はブラックバードを取り戻す為の行動を全く取れないでいた。
動かなければいけない事は分かっている。
それなのに、、、いや、だからこそ、行動を躊躇ってしまう。
恐ら...
ブラックバード-「飛べない鳥の旅路」より- 7章
鈴木先生が病名を宣告して数分も経たないうちに、小さじ1杯の涙を浮かべた千恵子が遠慮がちに入ってきた。
「ごめんなさい」
まだ僕自身が現状を受け入れられていないのに、何故か千恵子の口から謝罪の言葉が零れ落ちる。
なんで千恵子が謝る事にな...
ブラックバード-「飛べない鳥の旅路」より- 6章
灰桜色をした細かな花弁が散りばめられた天井の柄が視界の全てを覆っている……
いつの間にかブラックバードの作業部屋で、しかも全裸で寝ていたようだ。何故だ???
朦朧とする意識の中で状況を把握しようと思い返すが、プロモーション・ビデオの撮影...
ブラックバード-「飛べない鳥の旅路」より- 5章
打ち合わせが済んだ頃には、すっかりと日が暮れていた。
長い刑期を終えて、久々に自由を手にした気分だ。
しかし、未だに重い頭痛と酷い疲労が全身に充満している状態は未だ変わらず、僕は壊れかけのロボットみたいな歩き方で1階に降りる。
すると...
ブラックバード-「飛べない鳥の旅路」より- 4章
酷い頭痛で目覚めたのは正午を少し過ぎた辺りだった。
翌日が休日だからと言って二日酔いに良い事なんて何一つない。
この瞬間だけは人生で二度と二日酔いなんて誓うのだが、二日酔いが治る頃にはそんな稚拙な誓いは忘却の彼方だ。
この家は自宅兼事...