これは2008年1月に公開した0-9楽曲「チイサナセカイ」の基になったショートストーリーになります。
——————————————————————————
テレビを眺めるように見ていた。
テレビは今日起こった主な出来事を教えてくれている。
しかし僕の身の周りで起こった出来事は何一つ教えてくれない。
それはそうだ。今日は僕の身の周りで起こった出来事などテレビで知らせるほどではない。
それは幸せなこと。本当にそうだろうか?
そもそも今テレビが教えている内容はどれほど正確な情報なのだろうか?
「死刑が執行されました」
「外国で飛行機が堕ちました」
「株価が暴落しました」
「幼い女の子が誘拐されました」
僕にはそれら全ての情報を本当の意味で確かめる術がない。
しかしテレビを見ている殆どの大衆は何の疑いもせずに信用するだろう。
それはそうだろう。
テレビが誕生して長い月日が経ち、今まで、少なくともこの国のニュースの信頼性は
信用するに値する確率で公正に報道されてきた。
だからと言って、今日の出来事を知らせるテレビが正確だという保証はどこにもない。
その日を境に僕は、テレビを恐れるようになった。
この日を境に僕は、何も疑わない大衆を恐れるようになった。
こんなにもチイサナテレビで僕のセカイは操られているのだろうか?
漠然とした恐怖に襲われた僕は急いでリモコンを手に取り、チャンネルを変えてみた。
テレビの中には髪の短い女性が歌っていた。
この歌声も本物なのだろうか?
僕はテレビの中で歌い続ける彼女に問い掛けた。
コメント