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アサガオ 

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0-9ショートストーリー

今回は先に歌詞が完成して、それを元にストーリーを膨らませて書きました!

久々のショートストーリーなので、手探りになってますが、今の精一杯に挑戦できました。

最後まで読んで頂けると幸いです!


「アサガオ」

愛とかいう概念はいつも目に見えないから、
私はいつも疑ってしまう。
だけど、愛の賛歌を捧げ続けなければ、あなたは何処かに消えてしまう。

夕方のテレビが異国の紛争を当たり前のように報道する。
結局は他人。故に100%分かり合う事は不可能なのだろう。
ましてや、生まれ育った国や環境が違えば、当然ながら価値観も違えば、信じる神も異なる。

そんなことを考えている隙に、テレビは何事も無かったように天気予報の話題になっていた。
明日も今日と同じように雲一つない30℃を超える真夏日になるらしい。
ベランダに出て外を眺めると、オレンジの空が徐々に紫色に染まるように夜の帳が降りている最中だった。
見下ろすと公園の花壇に植えられた朱色のアサガオが萎れながら眠っていた。
きっと明日には何事も無かったかのように、満面の笑みで太陽と抱き合うのだろう。
そんなアサガオに嫉妬していると、遠くから聞こえる蝉時雨と共に、生温いそよ風が私の頬と髪をわざとらしく、いやらしく撫でる。
今夜もまた熱帯夜が訪れる事を示唆しているようでうんざりする。

いや、うんざりしているのは熱帯夜のせいだけではない。
そう、全ての元凶はあなたがこの部屋から消え去ったことだ。
いつの間にか、目に見えない愛が本当に何処かに逃げてしまったらしい。
どんな言い訳も弁明の機会も与えられないまま、
裁判長が無表情でガベルを強く叩き、判決を一方的に下したようだ。
そんな心に響くガベルの音が胸の鼓動と共に不安を煽る。
聴こえもしない愛の賛歌を信じ切れなかった私が悪いのだろうか。

夜に考え込むのはよくない。
暗闇の化身が悪戯にネガティブな思考を連れて来てしまう。
だから、可能な限り早く眠って楽になろう。

そう思い、急いでベッドに潜り込むが当然ながら眠気など訪れるはずもなかった。
寧ろ、不安が孤独を助長して覚醒を促しては眼が冴えるばかりだ。

だったら目を閉じて、可能な限り楽しかった思い出を振り返り気を紛らわそう。
妄想でもいい。
願望でもいい。
例え絶望でも、あなたが傍に居てくれるなら、それもいい。
布団を頭から被るが暑くてすぐに諦めた。
笑えないコメディーみたいだ。

時計は20時43分を指している。
夜はまだ浅い。
そう思い立った私は宛ても無く外に出て、光走性の虫の如く繁華街を目指した。
もちろん、そんな場所にあなたは居るはずもない。
平日の夜は人通りも少なく寂れているように映って見えたが、
恐らく、私の心が廃れているせいで、街も道連れに悲しく反映しているのだろう。
パチンコ屋のネオンサインが虚しく辺りをピンク色に照らし続ける。
今宵は新月で暗黒が更に黒く染まっていたから、余計に辺りは新鮮なピンク色に染まっていた。
あっすらと額と脇から汗が滲み出る。
熱帯夜を歩いているが、まるで灼熱の海を藻掻くように泳いでいるような気がして息が苦しくなる。

どんなに探してもあなたの姿は見当たらない。
もう駄目なのかもしれない。
或いは、既に帰宅しているのかもしれない。
そんな現実逃避に似た願望を抱きながら家に帰るが、やはり家には誰も居なかった。

気付けば、時刻は残酷にも深夜を迎えていた。
明日も朝から仕事が控えている。
心身共に疲れた私は汗ばんだ身体のままベッドに倒れ込んだ。

どうして、愛は目に見えないのだろうか?
或いは、本当は見えるはずなのに、私が初めから諦めているから見えないだけなのだろうか?
そんなどうでもいい事ばかり考えていると、いつの間にか眠っていた。

当たり前が当たり前ではない奇跡。
或いは、当たり前の存在こそが掛け替えのない幸福。
隣で眠るあなたの横顔を見た瞬間に思い知らされた。
目に見えない愛。聴こえてこない愛の賛歌。
しかし、確実に存在する愛。常に奏で続けられている愛の賛歌。
それを信じ続ける事が、あなたと共に居続けられる唯一の方法だと痛感させられた。

おはよう、新しい世界。ありがとう、新しい今日。
今頃はきっと花壇のアサガオも太陽と抱き合っているのだろう。
今の私とあなたみたいに。

いつか人類がその目で愛を見る事が出来れば、この世界から争いは無くなるのかもしれない。
或いは…

 


 

(MEIKO) アサガオ (オリジナル楽曲) – YouTube

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