2022年
8月8日(月)
午前11時43分。
プエブロウェスト。
とある美術コンテストに出品した作品が世界中で注目される程の物議を醸す。
その作品は新人アーティスト部門の「デジタルアート・デジタル加工写真」分野で1位に選ばれた。
世界中が驚愕した理由は、その受賞作品がAIで作成された事を作者自らが発表したからだ。
その告白を切欠にインターネット上では様々な議論が飛び交い始める。
AIは真の芸術作品を制作できるのか?
それとも人による制作を支援するものなのか?
そもそもAIは人類に必要なのか?
更にAIは芸術作品というジャンルだけに留まらず、商業目的としても浸透する。
すると、芸術家だけでなく一般人をも巻き込み議論は更に白熱する。
「機械を搭載した人間がオリンピックに出場するようなものだ!」
「誰かの絵を学習している時点で盗作と同じだ!」
「感情を持たないプログラムが絵を描く事自体がそもそも気持ち悪い!」
全く絵が描けない者が商用目的にAIイラストを利用した事に関する批判が主だった。
今まで必死で技術を身に着けた絵師からすれば、怒りを覚えるのも当然の感情だろう。
そしてAIがゼロから創造するのではなく、膨大なデータを用いて学習する観点からの非難も当然だ。
人類がAIに関する免疫が無い状態で、突如として現れてしまったAIイラストに混乱した。
その時、心の奥底で人類の歴史がそっと囁くように口ずさむ。
また始まった また重なった
また絡まった また広がった
また間違った また見送った
危なげな音色と声質は過去の過ちを嘲笑うように挑発する。
今回のダダは人間じゃない。
今回のダダは人類の分岐点。
誰も無関心では要られない。
誰も無関係では居られない。
何も考えないでAIに任せると、人間の個性が殺される。
まるで地図の無い迷路に放り込んだみたいだ。
そして『AIという名の自由』と『個性という名の不自由』が
仲良く手を繋いで人類に寄り添ってくるみたいだ。
それは敵か味方か、はたまた別の勢力か陰謀か?
昔のダダが懐かしい。
ネオダダが恋しい。
もう人類の敵は人類じゃなくなるというのに、
それでも尚、人類は人類と争い続ける。
或いは、人類が滅亡するシナリオをAIが企てているのかもしれない。
結局のところ、AI論争の終着駅は世界各国の政治家や有識者に委ねられる事となった。
その者たちもまた、世界を裏で牛耳る秘密結社だという事を世間に知らされないままに。
PS:思い返せば、カメラが誕生した1830年以降の芸術は現実に囚われる事無く
絵画の可能性を探求し始めた。
そこから写実主義が生まれ、印象派が生まれ、象徴主義が生まれ、ダダイズムが生まれた。
そう、人類は抗う生物なのだ。
だから、きっとこの先もAIが台頭すればするほど、人類はAIにも抗うだろう。
そして今まで以上の派閥や主義が生まれ、誰もが見た事の無い絵画を生み出すのだろう。
逆に、そうでなければ人間の存在意義が失ってしまうのだから。
2023年
6月2日(金)
午後9時11分。
ChatGPT。
Q:今後のイラストAIはどのような位置づけになりますか?
A:一言では結論は出せません。ただ短期的な視点と長期的な視点を考慮しなければなりません。
短期的な視点
・法整備が追い付いていない事から道徳的な問題が生じる可能性があります。
特に著作権に関する侵害が多数発生する恐れがあり、適切なAIイラストとの距離感が問われるでしょう。
長期的な視点
・AIイラストが誕生した事を無かった事にはできないでしょう。
既に一定数のユーザーが利用し、世間にも認知されてます。
またこれから生まれて来る世代からすれば、
物心が付いた事には既に存在しているツールにひとつに分類されます。
そんなAIネイティブ世代が大人になる頃、AIは確実にスタンダードとなっているでしょう。
その中で何処までをAIに任せ、どこからを自分で作業するかのバランスが問われます。
どちらにしても、AIイラストを完全に排除する事は不可能です。
ならば一刻も早くAIイラストとの適切な距離感を測り、有効的に利用方法を整備する事が得策だと考えられます。
2051年
11月2日(木)
午後1時29分。
木星圏・ガニメデ。
自由の女神を真下から描いた油絵。
その自由の女神の顔部分は灰色に塗り潰され、
その上にジョン・F・ケネディの写真が乱暴に貼られていた。
生前あまり名の知れなかったジョンという作家が残した作品。
題名は『僕の不自由な女神像・ヘブンリー』
ダダイストの中で密かに評価され、今では有名な美術館に飾られているとか、いないとか。
そして自由の女神の下には、黒いハットを被った裕福そうなスーツを着た小さな男が描かれていた。
男はデモ講義に参加する時に持つような大きなプラカードを持ってこちら側を見つめていた。
そのプラカードには、こう書かれいる。
「誰かのせいにするんじゃない! 死ぬときに後悔するだけだ! ダダ!」
(MEIKO) ダダタイダダダ (オリジナル楽曲) – YouTube
fin
コメント